2021年04月18日

鳥類学者だからって、鳥が好きだと思うなよ。  川上和人

楽しい読後感のエッセイでした。鳥が少し理解できたような気になりました。


・何もしないことは現状維持にはならないのだ。研究者は殺しを推奨し、担当者は文字通り、血と汗にまみれる。環境保全というきれいな言葉の裏にある泥臭い現実を忘れてはならない。
・世界全体の温室効果ガスの排出量のうち、森林減少によるものは約20%にもなる。世界の平和と経済的安定こそが、生態系保全の礎なのだ。
・鳥が何を食べようが、どこを飛ぼうが、社会にも経済にもとんと影響がない。そんな分野だからこそ研究には税金が投入される。国民の皆様ありがとうございます。成果を論文にしてお披露目し、世に還元するのは研究者に課せられた当然の義務である。(略)新聞の社会面や化学面に見られる小さな学術記事は、出資者たる国民の皆様への領収書なのである。


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2021年04月12日

わたしのげぼく  上野そら

わたしのげぼく
そら, 上野
アルファポリス
2017-07-01



泣いた。
反省した。オレはこれまで、いつもに次があるとつい思ってしまう。ダメだったら、次の機会にまた頑張ろうと、ついおもってしまう。自宅を建てる時だって、具合が悪かったらまた作ればいいやと思っていたし、大学だって、職業だって、結婚だって、人生だってそうだ、しょせん輪廻転生、そんなにあくせくしなくても次の人生があるだろうと。
だが、これではいかん!猫を飼うとは、命を預かること、次はないのだ。命つきるまで、下僕であらねばならないのだ。代替手段はないのだ。
もしかしてこれが一期一会ということなのか。還暦過ぎて、この本に教えられた。何と覚悟のない生き方をしてきたことか。

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2021年04月09日

ペルソナ 脳に潜む闇     中野信子



めんどくさそうな人ではある。
人はそれぞれで相対的という論を展開しつつ、絶対軸をどこかにおくかのように、自らを、「おかしい」とは、「普通」は、何を指すのかよくわからないけれど、同情を引きたいわけではないと思うものの、自分では「気の毒な」時間を過ごしてきたと考えている人なのだろうと思う。
とは言え、世に出て、希望どおり本も出版できてるし、成功者となり、めでたしめでたしの生き方のように思える。
共感でき、ちょっぴり「前向き」になれる言葉が、パラパラ出てきて、これが売れている理由だと思う。

・世の中の知的水準はこれとそうかけ離れたものでもないのかもしれない。見かけばかりは豊かで反映しているようだけれど、日本の実態は、それほど余裕のないところまで来ているということか
・攻撃されるのは、自分の能力とか性格とかそういったものとは無関係で、ただただ誰かを攻撃したい、ちょっとおかしな人が存在しているだけ
・一貫性がないと困る、という一見不必要な制約が脳に備え付けられているのだとしたら、それはどんな目的のためだろう
・あるべき姿ではない、というだけで、いかがなものかと、いつでも言いたがっている正義中毒者
・ルールに従うということは、選択の自由を放棄していることと同じともいえる。ルールというのは、むやみに濫用すれば、人々は思考停止させられてしまう
・私たちの正義は、不変のものでも、普遍のものでもない。集団として生き延びるために備え付けられている戦略の一つに過ぎないのだから、わざわざそれを守ろうとして命を失う、なんていうことは愚かなことだ。けれども、愚かだとは思いつつも、それを美しいという気持ちが多くの人に起こるのもまた確かなこと
・自己責任論を声高に説く人々のほとんどが、恵まれた位置にあるエリートであり強者である
・社会での役割をこなすために、本来の自分であることをしばしば覆い隠し、求められたペルソナを演じる必要がある。本来持っている性格そのままに、自然にふるまいたいという衝動と、その衝動を空気を読む前頭前皮質が抑え込んでいるという均衡の上に私たちは存在している。確かに、美しい振る舞いとは決して本能のままにふるまうことではありえないのだろう。でなければ、これほどに巨大でランニングコストのかかる前頭前皮質を、出産を困難にしてまで、人類が保持している理由がわからない。
・世界に数十億いる人々は互いに異なる思いを持ち、別々の世界を見ている。世界は誤解に満ちていて、その思いを完全に共有することは困難だ。しかし、その世界に挑むようにして、私たちの脳は言葉を生み出してもいる。言葉は不完全かもしれないが、本質的に通じることのない各個体の世界をわずかでも結ぼうと売る、生命の根源的な希求の果てに生まれた奇跡の結晶のようなものかもしれない。
・回復が難しい深い悲しみの中にあっても、乗り越えられないあなたが悪いと突き放してしまうような明るい高慢さがまぶしく輝く
・勝ち組負け組、働かざるもの食うべからず。社会、世間に対して何か供するものがなければ死ね、とでも言わんばかりの、豊かさとは真逆のところから出てくる発想がなんとも悲しい。私は役に立っていますと言い訳をしながらでなければ生きていってはいけない世界。いかにも余裕のない、心の貧しさが濃く漂う言葉。
・人間は間違い探しが大好きで、他者の間違いを正すことに興奮と快楽を求める生き物なんだな    

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2021年04月06日

たちどまって考える ヤマザキマリ

たちどまって考える (中公新書ラクレ (699))
ヤマザキマリ
中央公論新社
2020-09-08


エヴァンゲリオンもそうだし、世界を救うのは女性なのかもな。ジャンヌダルク待望論的持論。
もっと自分の頭で考えよう。
この人の言うことすべてが賛同できるわけではないけれど、共感できる部分が多い。

・一匹狼よりもグループ(→みんなで責任を分かち合い、赤信号みんなで渡れば怖くないのさ)
・そもそも人生とは思い通りにならないものであり、どんな顛末も現象も起こりえるということを理解していれば、もっと楽に生きていけるはず(→世間という空気がそれを許さないのさ)
・天災大国の日本では、実は疫病に対してもむやみに争うものではないという意識が根底にあるのではないか。(→八百万の神々とうまく折り合いをつけていれば何とかなる国なのさ。そのうち、神風が吹く。もしかして選民思想の国なのかも)
・「わかってもいないくせにくちをだすな」という反応は、民主主義の仕組みを理解していれば本来出てきようもないもの(→そのとおり、日本は民主主義国家ではないのだよ、神国なのだ)
・この困難な時に余計な批判で波風を立てるな(→空気を読めない奴は、村八分だぞ)
・日本はシャーマニズムがなじむ社会構造(→西洋式民主主義とは馴染まない)
・社会において認識されている役割以外の行動をとるべきではないという狭窄的で怠惰な想像力に甘んじている(→日本はそういう社会さ、異質性は排除されるべきだと考える社会)
・「世間体の戒律」で動く社会。名前の公表?集客効果をもたらす宣伝になるだけなのじゃ?(→かつて「恥の文化」としてもてはやされたこともあったけど、恥なんて死語?。)
・過激な物言いを嫌い、波風を立てず、経験しなくていいことはせず、知らなくていいことは知らず、いないように生きていたい(→最近はそうでもないのじゃ?、自己顕示欲や承認要求強い人ばかりに思えるけれど、とは言っても、匿名にかぎるのかもね。ズルい卑怯者が増えたのかもね)

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2021年04月01日

バグダードのフランケンシュタイン  アフマド・サアダーウィー著、柳谷あゆみ訳

あまり読んだことのないアラブ世界というかアラビア語で書かれた小説の翻訳。興味深く読めた。前提とする知識も異なると思うのだけれど、翻訳がうまくて違和感なく読むことができた。でも中身はいろいろと考えさせられる。聖人とか占星術とか、本当にまだ信じられているの?という驚きとか、単なるフィクション?なのとか。憎悪というものがどこから生まれてくるのかとか。聖人として朽ちていく彼のために、新鮮な自らの生身の体を提供するという宗教的恐ろしさとか。
バグダードのフランケンシュタイン
柳谷 あゆみ
集英社
2020-10-26




自爆テロが頻発する2005年のバグダードの町の片隅で、古物商のハーディーが、爆発で折り重なる死体をつなぎ合わせて作った「人間」が、思いを残して殺された体のパーツ(複数のもとの人間)の怨念から、復讐者「名無しさん」となり、事件を起こす。

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2021年03月22日

赤いモレスキンの女  アントワーヌ・ローラン

赤いモレスキンの女 (新潮クレスト・ブックス)
アントワーヌ・ローラン
新潮社
2020-12-21




まずケチをつければ、邦訳タイトルがなんだかなあ。
でも、久しぶりに一気に読めた楽しい小説だった。
クロエって娘がいいフィーリング。職業の設定も素敵。舞台がパリなのもとても物語に説得性を与えている。おれのTシャツにも、ヒエログリフで名前を刺しゅうしてもらっているけれど、いつか役に立つ時が来るかしらん。

(あらすじ)
ハンドバックを強盗に奪われ、直後に昏睡に陥った女性。そのハンドバックを拾った男性。クリーニングのチケットとサイン本を頼りに女性を探そうとする男性(考えようによっては変態である)。結末は?

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2021年03月19日

やがて鐘は鳴る  フジコ・ヘミング

口述筆記体の文なので、あっという間に読めた。変なおばちゃんていう印象は、今までどおりなのだけれど、もう一度彼女のCDを聞きたくなったのは事実。頑張って努力していれば何とかなるかもという幻想を一般人にも与えてくれる。
音楽は、いいなあ。
信仰は、(しょせん、脳の働きという論だとしても)必要なのかもしれない。




・心から楽しめることを持つのは、生きていくうえで、とても大切なこと
・子どもは親を選ぶことはできない、それに、良い性格や恵まれた才能だけを受け継ぐわけじゃない、けれど、親から受け継いだどんな性格や才能だって、きっと人生には役に立つ
・彼女が試合の点数で負けたとしても、私が彼女のスケートを見て感動したことには変わりはない。一番大切なのは、そこに感動があったこと
・なんの宗教か、どの神様を振興するかということよりも「信じて祈る」ことの大切さは学んでいた。お願いしたりするとき人は謙虚さを取り戻すことができるでしょう
・聖書に書かれていることに矛盾があると指摘する人もいるけれど、その言葉が実際に人の傷ついた心を癒してくれたり、励ましてくれたりすれば、それでよいと思う

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2021年03月18日

ザリガニの鳴くところ  ディーリア・オーエンズ

湿地の少女 親にも兄弟にも捨てられ、湿地の小屋で一人成長する白人の貧しい少女の成長のお話。64歳で死ぬまでを描くけれど、長い。でもそれなりに感情移入ができて、どうしようもなく性悪な人間は登場せず、最後はハッピーエンドでよかった。

ザリガニの鳴くところ
ディーリア・オーエンズ
早川書房
2020-03-05



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2021年03月10日

ワカタケル  池澤夏樹

ストーリー自体は面白い小説ではない。それでも、史実に沿ってイメージできる物語というかファンタジーに仕立ててあるのは大したものであった。5世紀中ごろのこと。

ワカタケル
池澤 夏樹
日本経済新聞出版
2020-09-19




(備忘メモ)埼玉県の稲荷山古墳から出土した、鉄剣に刻まれていたワカタケル大王は、第21代天皇である雄略天皇だといわれている。雄略天皇は、中国の宋に使者を送った倭の五王の武だと考えられており、倭王武は、朝鮮半島南部の支配権を認めてもらおうとして中国に使者を送ったと伝えられている。考古学的には実在した最古の天皇だと言われている。即位後も人を処刑することが多かったため、大悪天皇と言われていたという説もある。雄略と思しき大王の名が刻まれた鉄刀・鉄剣が熊本と埼玉で見つかったことから、5世紀後半にはすでにヤマト王権の支配圏が九州から関東までの広範囲に及んでいたことが推測できる。
<青空が好き!>

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2021年01月16日

ヤクザときどきピアノ  鈴木智彦

65歳になろうというのに再びピアノレッスンを始めた。ヤマハの月謝が高くて、年金生活者には痛いのだが楽しい。
この本、共感するところが多い。レイコ先生ナイズジョブ! ピアノは音を出すのはたやすい、でも美しく弾くのは難しい。でも、弾けない曲などない(はず・・)。練習さえすれば!頑張ろうぜ!ご同輩!

ヤクザときどきピアノ
鈴木 智彦
CCCメディアハウス
2020-03-31



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