哲学と宗教 全史  出口治明冒険の書 南谷真鈴

2020年07月12日

流人道中記  浅田次郎

少し期待とは異なる物語。日本中が涙したという結末に、期待しつつ読み進めたけれど、がっかり。
社会構造のありように疑問を持ちつつも、個人的な事柄に収束して、世の中は、何も変わらず。武士そのものへの贖罪的な罪を甘んじて受けるといっても、その真意が裁きの三奉行にわずかに伝わっているらしい雰囲気はあるものの、「青山玄播」の考えは、誰にも伝わらず、自己満足の域を出ていないように思う。口伝でその真意を明かされた石川乙次郎においてさえ、理解していないのか、最後のセリフが武士を肯定するかのような「新御番士青山玄播様、ご着到、くれぐれもご無礼なきよう」では、逆に武士社会のありようを尊重せよと言ってるも同じではないか。せめて職位なく、名前だけで呼びかけてほしかった。
かつて「蒼穹の昴」を読んで以来のファンなのだけれど、読みやすさ抜群は相変わらず。新聞に一年以上続いていたらしいから好評だったのだろう。

「世の中、情理は裏と表でござんす。道理の通らぬ情に絆されてはなりやせん。情のねえ理屈を通してもなりやせん。」
「存外のことに、苦労は人を磨かぬぞえ、むしろ人を小さくする」



kidnight1tt at 10:32│Comments(0) 

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